ダウンタイムのしくみ
いわゆる外科的処置と呼ばれる施術には多かれ少なかれ腫れや内出血などのダウンタイムが発生します。
これは傷を治すための体の反応によるものですが、傷が治る過程で体内で何か起きているのかが分かると、なぜ術後の経過観察で3~6か月は様子を見てくださいと言われるのか、なぜケロイドが出来るのか、などが理解できますので説明していきたいと思います。
4つの分類
傷が治る過程は主に4つに分類され①出血期 ②炎症期 ③増殖期 ④成熟期と呼ばれます。以下各過程について見ていきましょう。
①出血期
出血により血管内の血小板が外に飛び出します。飛び出た血小板からは傷を治す細胞や免疫細胞を呼び寄せるグロースファクターが放出されます。
②炎症期
グロースファクターによってコラーゲン生成細胞や白血球などが集合します。
③増殖期
生成されたコラーゲンにより傷を埋めていきます。このコラーゲンの塊が肉芽です。
この肉芽はとりあえず傷を埋めるための間に合わせであり乱雑なコラーゲンです
④成熟期
乱雑なコラーゲンを整列したコラーゲンに置き換えていき治癒が完了します。
それぞれの過程はオーバーラップしつつ①→④の順で進んでいきますが、③増殖期の終わりまでがおよそ1か月間、④成熟期の終わりまでがおよそ3~6か月間かかります。
3~6か月間様子を見るのはこのためであり、しっかり時間をおかないと完成した状態になりません。また時間をおかずに再手術をしてしまうと正常に進んでいた治癒過程が崩されてしまい、ケロイドや異常拘縮などが発生するリスクが高くなります。
ケロイドとは、過度の刺激や異物反応などが原因で③→④のステップが進まずずっと③増殖期のままとなり、過剰に肉芽が作られ傷が盛り上がってしまう状態のことです。
また拘縮についてですが、③増殖期にて生成される乱雑なコラーゲンは周囲の組織を引き寄せる働きがあるため、③増殖期が終わる1か月目にかけては正常な状態でも硬く拘縮をおこし傷がつっぱります。その後④成熟期にて整理されたコラーゲンになると組織が柔らかくなり拘縮が改善していきます。柔らかくなるとはいえ整理されたコラーゲンは元の組織よりは硬いですので、過剰な肉芽が作られると異常拘縮も起きやすくなります。
ダウンタイム中は誰もが不安になりますが焦る気持ちをこらえ頑張って様子を見るようにしてください。ただし赤みや腫れ、痛みなどが悪化している場合は様子を見ずに素早く診察を受けましょう。
記事執筆医師プロフィール
アリエル美容クリニック 大宮院医師 / 技術指導医
阪野一世
- 福島県立医科大学 卒業
- 福島県立医科大学 形成外科入局
- 群馬県立がんセンター 形成外科
- 帝京大学病院 形成外科
- 静岡県立こども病院 形成外科
- 寿泉堂総合病院 形成外科 医長
- 大手美容外科 院長
- アリエル美容クリニック大宮院